大阪市ごみ減量フォーラム

市民協働で進めるごみ減量

〜具体的事例から実践へ〜の報告

 

大阪市ごみ減量フォーラムが20101030日(土)、大阪市環境局主催、NPO法人 ごみゼロネット大阪の企画・運営で136人の参加を得て開かれました。「実践!協働!ライフスタイル・ダイエット!〜「想像力」と「創造力」で広がる、ごみ減量の輪〜」と題して、大阪産業大学人間環境学部教授の花田 眞理子さんの基調講演を聞いたあとパネルディスカッションを行いました。

 

基調講演要旨

21世紀は環境の世紀と言われるが、つながりの希薄化が環境問題を生み出していると言われています。人と人、世代間や生態系のつながりが大量生産・大量消費によって見えなくなっています。もう一度、ライフスタイルでつながりを意識することが重要です。「循環型社会」への変換の取り組みの広がりを支えるのは、行動の結果や自分以外の存在を「想像する力」と、つながりを「創造する力」です。産業部門のCO2排出量上位に焼却工場が入っていますが、ごみを減らせばCO2は大きく削減できます。アンケートの回答に「ひとりだけやっても…」と、情報不足とつながりの不足が見えてきます。ごみ減量の輪をはぐくむためには上手にコミュニケーションを取り、「お得で楽しくスマートに」とうまくインセンティブを使いながら、効果的な協働のしかけを作って一緒に取り組むことが重要になって来ます。

 

続いて、4人のパネリストから基調報告がおこなわれました。

基調報告要旨】

1.  上勝町から NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー事務局長 藤井 園苗さん

上勝町は人口約2000人、ゼロ・ウェイストとは、「そもそもごみを出さない」ことをめざしています。町民みずから34に分別する34分別は日本で一番多いと言われ、生ごみは各家庭で堆肥化しています。はっぱビジネス「いろどり」と34分別の見学に全国から人が訪れ、若者が移住してきます。おばあちゃんの知恵を生かしてリメイクして販売、地域のお祭りにはリユース食器を使用しています。ごみは暮らしの基礎で、地域の活性化、高齢者医療・福祉などにゼロ・ウェイストがかかわっています。

2.  北九州市から 北九州市環境局 循環社会推進部 循環社会推進課長 作花 哲朗さん

かつては公害の町だったが、従業員の奥さん達が工場に働きかけ、市と企業の間で紳士協定を結んだ経緯があり、この経験を生かして、海外の途上国の環境問題の解決に協力しています。エコタウン事業は環境保全と産業振興の両立を図っています。1998年には政令都市で初めて有料ごみ制度を採り入れ、2006年には袋の値段を値上げしました。2004年には事業系一廃の自己搬入手数料を値上げし、古紙や木材を焼却場へ持ち込み禁止としました。いずれも周知徹底のため、説明会をこれでもかと行いました

3.  東京都町田市から NPO法人 町田発ゼロ・ウェイストの会 理事 仲村 達郎さん

町田市は、人口約42万人の町で、家庭系のごみが2009年で一人当たり468g(大阪市では600g、全国平均は1.1kg)と相当意識の高いところ。1994年に現市長が「ごみになるものは作らない。ごみは燃やさない。埋め立てない。」という公約を掲げ、当選しました。焼却場ができて30年、埋め立て処分場も焼却場を作る場所もなく、自前で減らそうと2006年、市長が「ごみゼロ市民会議」を招集。130名が2007年に7つの提言を出しました。これを受けて、町田市は中期経営計画を同年に発表、戦略目標を<環境先進都市の創造>とし、重点施策に<ごみゼロの町をつくる>ことを掲げ、再資源化を重点事業に据えました。2006年、「町田発ゼロ・ウェイスト宣言の会」を発足し、20089月に法人化しました。ゼロ・ウェイストの理念のもとにまちづくりを進めて行きたいというのが私たちの思いです。

4.  大阪市から 大阪市環境施策部家庭系ごみ減量担当課長 村上 勝幸さん

大阪市は減量施策により、焼却ごみは118万トンに減っています。目標は2011年に110万トンです。118万トンの内訳は、家庭系が50万トン、事業系が71万トンです。大阪市は事業所の数が日本一で、夜間人口が昼間人口より少ないので、総ごみ量を人口で割って出す市民一人当たりの排出量は1600gとなり、全国一といわれています。家庭系だけなら632gとなり政令指定都市の平均の728gよりも少ないのですが、事業系は人口で割ると972gとなり平均が428gなので図抜けて多いことになります。紙の回収がまったくできておらず、リサイクル可能な紙が燃やされているので、今年7月から各戸収集による集団回収の奨励をしています。2015年までにさらなる紙ごみ減量を検討していきたいと思っています。

 

パネルディスカッション

市民協働について

北九州市からは、「行政が知恵を出してシステムを作ったら、そのシステムを地域のみなさんに理解してもらうことから市民との協働という形が出て来る。事業系ごみの手数料の改正や家庭系ごみ収集制度の見直しに何度も説明会を行った。」と発言があり、町田市からは、「ごみゼロ市民会議のときは、これが市民協働だと喜んだ。提言を市が受けてくれ、素晴らしいと思った。中期経営計画ができた後、市は意欲を失った。議員を選ぶことも考えに入れなければ」と反省が聞かれました。大阪市は、「市民協働というのは、行政の施策に、市民がその通りに従うことと、間違ったとらえ方をしていた。共に行うことで、行政が市民の方に行くという発想が欠けていた。事業者は、企業イメージとかなんらかのメリットがないと協力してもらえない。今後はコーディネーターとしての行政をめざす。」「商店街などのロットの小さいものに対して、どうしたら安い運搬費用で回収できるか考えていかなければ。たとえば商店街全体を一つの排出単位としてロットを大きくするなど、どう行政がコーディネートして行けるかが問題。」と話されました。

 

市民の意識を高めるには 市民をどうやってまきこんでいくのか

大阪市と北九州市から「見学ツァーを催すことが重要。」町田市からは、「危機感を共有しなければ、ごみの減量は進まない。リサイクル広場は地域のボランティアでやっている。市は拠点の増加を考えている。」これについて花田先生から、大学生を巻き込んだらとのアドバイスもありました。上勝町からは「上勝町は評価され始めた。それが町民の誇りだ。高齢化のため分別できなくなり、ごみは増えているが、市民運動と行政のつながりの力で解決して行く。」と力強く発言されました。

 

フォーラムを終えて

 大阪市が結構頑張っているのがわかりました。ワーストのイメージを払拭できるよう、さらに頑張っ

ていただきたいと思います。これからの時代は市民協働と言われて久しいですが、まだ市民は行政の都

合の良い働き手という感があります。市民が多く期待すると、行政はそんなに思っていなくて裏切られ

たと感じることも往々にしてあります。大阪市条例で処理手数料の値上げが決まっているのに施行がで

きないのは、業界の反発があることは容易に想像できます。私たち市民はそれくらいのことにめげるこ

となく、どことコミュニケーションを取れば良いかを冷静に判断し、次の策をめぐらせるしたたかさを

持ちたいと思います。                           (記 水川 晶子)